野村店長と新店舗プロジェクトリーダーを務める松浦さんという、アンティーク時計の経験も豊富な二人の対談、第4弾。現在は大人気で、アンティーク価格が高騰しているロレックスよりもオメガの方が人気が高かったという。それは現在の価格にも影響しているのだ。
数は圧倒的にオメガ
この対談の初めにオメガとロレックスの話が出ましたが、昔はロレックスよりもオメガの方が人気が高かったのですか。
野村:まあ、圧倒的に数はオメガの方が売れてますよね。ロレックスは、専用の工具がないと開けられないという弱点があるんです。どこでも大きな街に行けば、それなりの宝飾店みたいなのが一軒ありますよね。そういうところが高級時計をひとつ扱いましょう、となると、必ず、ロレックスではなくオメガになるんです。
松浦:なんかあったときに、うちはロレックスを開けられないから外に出さなきゃ行けないんですよ、ってなるんです。お客さんと話すときに落とし所が難しいんですよね。ロレックスは設備を整えなきゃいけないんです。
野村:微調整も専用の工具が必要だったり、そういうのもあるので、じゃあ1社やりましょうとなったらオメガなんですよ。もしくはロンジン。で、ユニバーザル、IWCときて、その次がロレックスという感じなんです。売ったお店の数は、圧倒的にオメガが多いんです。
松浦:あとは、昔の銀幕のスターたちが腕にしてたのも、ロレックスよりもオメガだったりして。そういうところもあったんじゃないですかね。
野村:やはり一店舗扱ってくれたら、最低でも10本、20本は置いてくれるわけじゃないですか。しかも、街一番の高級店で、どこの時計がいいのって聞いたら、オメガって言われるんです。オメガの知名度が高いのはそれが大きいですよね。ロレックスは、日本国内でも60年代くらいから扱うお店はちょこちょこ出てくるんですけど、それでも国内では5番手、6番手くらいだったんです。スイスの高級時計を5社、6社扱うとなれば、かなり大きなお店じゃないですか。それは街一番という規模ではないので、限られてきます。そう考えると、当時ロレックスはオメガの1/10くらいじゃないですかね、日本国内での販売数は。
松浦:ロレックスが一般的に知られるようになったのは、やっぱり80年代ですかね。コンビモデルを持ってる人が結構いましたから。一気に日本に広まったというか、一気にステータスが上がったのは、やはりその時代なんじゃないですかね。
ロレックス人気は80年代以降
ロレックス『GMTマスター』1982年製
野村:いまもっとも人気の高い『デイトナ』のポール・ニューマンモデルも、発売当時、時計ディーラーをやってた人たちが「こんなの流通してなかったよ」って言うんですけど、いまはスゴイ状況になっているという不思議。
松浦:スティーブ・マックイーンやポール・ニューマン、クリント・イーストウッドなどがつけていて、それに憧れた日本の芸能人とかが求めて使い出したと。そのタイムラグを考えると、やっぱり80年代なんですかね、人気が出たのは。
野村:石原裕次郎さんも『GMTマスター』してましたし。
松浦:そのあたりから来たんじゃないですかね。高倉健さんも共演者にロレックスをプレゼントしてた、という話もありますしね。いろいろ逸話のある時計ですよね。いい時計であるのは間違いないです。
野村:ロレックスはちょっと嫌だという人はいますが、オメガを嫌いっていう人は、あまり見たことがないんですよね。オメガ、IWC、ジャガー・ルクルトは、嫌いっていう人を、ほぼ見たことがないです。
松浦:あんまり弱点がないんですかね。
野村:オメガは格好いいし、実績もある。
松浦:『スピードマスター』は格好いいし、よくできたデザインですよね。
野村:装着感がいいんですよね。
松浦:そう考えると、時計のデザインは50年代くらいで終わってる感じがしますね。
野村:50年代、60年代に完成しちゃってるんですよね。『スピードマスター』はその代表格ですよね。60年代末に861が登場して、ほぼ同じ機械を今でも使っているという。ベルトはちょっと重くなりましたけど、デザインはほぼ変わってない。
オメガ『スピードマスター プロフェッショナル 5thモデル』
松浦:この時代のデザインの完成度はスゴイですよね。
野村:それを覆せないでいる。そう考えると、アンティークオメガは秀逸です。しかも価格的にも選べるし、ものもしっかりしている。言うことないですね。これからはオメガですね(笑)