それまでのクロノグラフとはまったく発想の違うトレンディウォッチ、ブライトリング『トップタイム』

それまでのクロノグラフとはまったく発想の違うトレンディウォッチ、ブライトリング『トップタイム』

2020年に復刻モデルが登場

 

   2020年、ブライトリングの新作ウォッチに「トップタイム リミテッドエディション」が、復刻モデルとしてラインナップされた。ブライトリングらしい2カウンターのクロノグラフモデルは、レトロ感も相まって注目を集めた。そうなるとオリジナルモデルがどのようなものだったのかが知りたくなるので、ここで紹介したい。

 そもそも「トップタイム」が登場したのは、1962年のこと。3代目の経営者であるウィリー・ブライトリングが、ベビーブーマー世代の奔放なライフスタイルを見て、新しい顧客層へのアピールが必要だと考え、そして「若者のフィールドへと乗り込み、彼らの言葉を話す」と実行に移したのだ。

 それはマイルス・デイヴィスやグラハム・ヒルなどの著名人が着用し、高い人気を誇っていた「ナビタイマー」とはまた違った層へのアプローチ。求めたのは伝統的なデザインコードではなく、若者のライフスタイルに寄り添ったスポーティかつモダンなコレクションだった。

 そうして誕生したモデルが、シンプルでありながらエレガントなラインを描いたデザインと精密さを備えた、低価格のクロノグラフ「トップタイム」である。ステンレススティールやゴールド、ゴールドコーティングとさまざまな素材を揃えた多様性と覚えやすいネーミングもあって、「トップタイム」はすぐに人気コレクションとなっている。

 

  さらに65年には、初期モデルの2カウンターダイヤルのモデルを映画『007 サンダーボール作戦』で、ジェームズ・ボンドが着用し、それに拍車をかけている。

 

女性層へのアピール

 

 伝統にとらわれず若者の心を掴んだ積極性は、次の段階へとステージを移すのだが、それが、なんと女性層へのアピールだった。機械式クロノグラフをファッションアクセサリーにしようとしたのだ。当時のウォッチメーカーとしては画期的ともいえる思考である。ウィリー・ブライトリングがどれだけ柔軟な考えを持っていたかがうかがえる。

 そして、大胆にもケースデザインをラウンドからスクエアケースに変更するのである。これもヒット商品となり、『ヴォーグ』や『ハーパーズ バザー』といったファッション雑誌にも広告が掲載されているのだ。

 もちろん、このスクエア型の『トップタイム』も多様なケース素材、ダイヤルが用意されおり、機能とスタイルの組み合わせという新たな選択肢を確立している。当時ブライトリングUKのマネージング・ディレクターを務めていたギャビン・マーフィー氏も、後に「この時計は少し型破りで破壊的でした」と語っているほどだ。 

 

 つまり『トップタイム』は、クロノグラフモデルをパイロットやカーレーサーを想定した機能的ツールではなく、自身のスタイルを表現するアイテムのひとつとして捉えたコレクションで、かなりアヴァンギャルドな腕時計でもあったのだ

 この『トップタイム』は、一度70年代後半に姿を消している。その間の製造数が公開されていないので、市場に出たモデルの本数はわからない。ただ多様なバリエーションを製作していたのは確かである。搭載ムーブメントは、どれもが手巻きの機械式クロノグラフ。ヴィーナス社とバルジュー社による5つのムーブメントが使用されている。

 

 

 

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