A=アンティーク時計店・店長 B=マーケティング業・時計愛好家 C=投資家・時計コレクター D=時計ライター
座談会第2弾は、セイコーのライバルであるシチズンの話から、注目の海外メーカーまで。そして、時計市場の現状についても言及している。
シチズンの海外でのブランド力とは?
C:シチズンはダメなんですかね?
A:シチズンはプレミアがつくモデルっていうと『シチズンクロノメーター』の1stモデルですね。それと『グロリアス シチズン』。これはどちらもうちのお店に出してまして、『シチズンクロノメーター』が39万8000円。これはステンレスケースが珍しいのでステンレスモデルが49万8000円。『グロリアス シチズン』は、シチズンがグランドセイコーのGSに対抗して、GCという名で売り出しています。これが98万円となってます。
『グロリアス シチズン』1971年製
C:シチズンは海外の評判でいうと、存在感がほぼゼロみたいな感じに見えます。機械式を一度やめたからなのかなぁ、と思うのですが。
A:そうですね。機械式についての評価はそんなに高くないですね。
C:グランドセイコーのロジックと同じで、現代のブランドに対する評価が訴求して過去の時計にも影響があるというと、逆にシチズンはブランド力が下がっているんじゃないかと思っています。機械式をやめちゃった影響もありますし。
A:いまシチズンで評価が高いのは、ソーラー電波であったりとか、そういった方向性になります。意外と評価が高いのが、電波時計のファーストモデルなんです。
D:ダイヤルの真ん中に棒があるやつですね。
A:そうです。あれはコレクターの間では人気らしいですね。
C:なるほど、電波とかソーラーなのか。ときめかないですね。
A:正直、修理はできないです。メーカーで受けてないという状況ですので、時計店でも扱う基準にはならないということですね。
『ザ・シチズン』の機械式
C:シチズンも本気で機械式やるのかな、みたいな感じで復活しましたよね、機械式。僕、買ったんですけどね、復活した最初のやつを。
D:シチズンは一度全部の機械式をやめていたんですが、2000年代後半にETA問題があった時に、ムーブメントが足りなくなったスイスからの要請で、また機械式のムーブメントをつくったんですよ。供給するつもりでつくったのですが、どうせなら、ということで『ザ・シチズン』に載せたということでした。
C:僕は『ザ・シチズン』の機械式は、復活の狼煙と思い購入したんです。現代のブランド力が上がれば過去も上がるという意味でいえば、シチズンも5年とか先を見るともしかしたら。。。ノンセイコーのジャパニーズブランドでいいよね、とかならないですかね。
D:でも、アンティークショップでシチズンのアンティークを見ると、状態がいいのが多いですよ。
A:うちもかなりいいものを揃えてますよ。
C:時計はいいと思うんですけどね。ブランド力はグランドセイコーと天と地になってしまいましたね、海外を見ると。
A:シチズンを買う人というのは、ちょっと毛色が違うというか。たとえばクルマでいうと『レクサス』が圧倒的な人気なのですが『シーマ』に乗るって感じですね。
C:あとスバルとか。ちょっと違う感じですね。
D:それでは、外国製で注目モデルってありますか?
A:世間的にいえば、景気が後退気味かなという雰囲気になれば、ロレックス、オメガという2強がより強くなってくると思います。オメガにこれから集中するんじゃないかなという感じはしますね。ロレックスのいいやつが100万円オーバーになってくるので、庶民的な感じはなくなってきます。そうなればオメガが、という。時計好きには面白いんじゃないかなと思いますね。
市場的にロレックスは?
D:ロレックスが高くなっているのは多くの人が知っているんですけど、いま市場的にはどういう状況なんですかね?
A:新品系はですね、モデルによってはかなり値崩れしているというような状況です。ちょっとバブル的、投資的な感じで売れてたモデルが軒並み下がっているというのが現状ですね。なので、いま中野では買取を抑えているというお店がかなり多いようです。
B:毎日下がってますよね。『デイトナ』のステンレスとか『サブマリーナー』のステンレスとかは、毎日下がっているんじゃないですかね。『サブマリーナー』のデイト付きとかは、もう200万円切ってますね。昔、グリーンサブが130万とか140万とかで売ってたときに比べたら全然高いんですけど。いまどんどん下がっているので、逆に買いだとはみんな言ってますね。
ロレックス『サブマリーナー』Ref.16610
A:いまは買い漁っていた中国人が手放しているというような話がありますね。最近は欧米人が買っていると。
B:お店に中国人が来ているといいますよね。
A:来てますが、買いにではなくて、売りに来ているっていいますよね、中国人は。
D:何かあったんですか?
A:中国経済が微妙なんじゃないんですかね。
C:不動産バブル崩壊ですよ、あの国は。
B:そうなんですね。
C:恒大集団の債務問題とかありましたよね、ちょっと前に。中国国内でも時計屋さんにロレックスが溢れてるみたいなのは聞いてますよ。ディーラーを通じてそんな話がありまして。
中国で買うのはありか?
B:中国で買った方が安いんですか?
C:為替の話はありますけどね。ドルと元の相場次第では安く買えるかもしれないです。
D:溢れているのなら、可能性はありますよね。
C:中国系のYouTubeの情報によるとそのようですね。ロレックスが溢れていると。
B:僕のところにも、中野のお店から急に連絡がくるようになりました。安くするんで買いませんか、みたいな感じで。これまでお客を雑に扱っていたところが、丁寧に対応してくれるようになりましたね。わかりやすいです。売れてないんですよ。
C:僕の友人がロレックスと株式市場の関係みたいなのを調べたことがあって、仮想通貨とはわりと連動してる、みたいなことを言ってましたね。結構有名な時計コレクターで、仮想通貨でぼろ儲けした人がいまして。海外の人も仮想通貨で儲けたものをロンダリングで時計に替えるみたいなことをやっている人たちがいるんです。仮想通貨のマネーは流れたような気がしますけどね。
B:Y店は、仮想通貨、ビットコインで時計買えるんですよね。
C:そうですね、いまでもやっているんですかね。痛い目に遭ってる気がしますけど。
D:Y店はそういうことやってるんですか!
C:あそこはいち早く取り入れたんですよね、そういうのを。ビットコインマネーのようなバブルの泡が流れてきたのがロレックスの市場だと僕は思うから、当面は厳しいんじゃないかなと思いますけど。
B:現行品を扱っているところで聞くと、上がってもらわないと店が潰れると言ってました。
C:みんながバブルで上げてきたじゃないですか。
B:だから本当の実勢価格はもっと低いんじゃないかと思いますね。でも価格は下げれないですから。中野の業者価格で売ってくれたりするところがあるんですけど、話をしたら、全部赤字って言ってました。並んでいるもの、全部赤字ですって。
A:本当にプレミアム価格がついているのは、一握りしかないんで。大崩れって、そうないんですけどね。
D:現行時計はいまバブルな感じがしますが、アンティーク市場はロレックスだけがバブルな感じだったんですね。実際のアンティーク市場って、近年はどんな感じだったんですか?
A:バブル期は、価格的なことでいうと、それこそパテック フィリップが20万円出さないで買えますよ、という時代だったんです。そこから徐々に徐々に上がり続けている感じですね。
パテック フィリップ『カラトラバ』Ref.3796 1980年代製
C:ある意味景気変動に強いというか、あまり影響を受けないんですよね。
A:そうですね、あまり影響は受けてないです。ロレックスでも、手巻きの『デイトナ』とかは景気に左右されている部分はあるんですけど、『デイトジャスト』の値段ということでしたら徐々に徐々に上がり続けている、という感じですね。ここ5年間、値段変わってないねと思ってたら、また上がりはじめるという感じです。現行と違って安定感みたいなのがありますね。
C:実感ありますね。時計を買う人って、それなりに資産価値を気にして買うような気がしていいますから。