【今月の1本】エリック・クラプトンの名がついた、複雑機能の名機ユニバーサル ジュネーブの『トリコンパックス Evil Clapton』野村一成(店長)

【今月の1本】エリック・クラプトンの名がついた、複雑機能の名機ユニバーサル ジュネーブの『トリコンパックス Evil Clapton』野村一成(店長)

30年前は最高峰の時計


 最近、海外の相場が高くなって、日本でもその相場に近くなってきた時計があります。ユニバーサル ジュネーブの『トリコンパックス Evil Clapton』(通称:トリコン)。1960年代製です。


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 この時計は、30年ちょっと前まではとても評価が高く、『モノマガジン』などでも最高峰の時計として掲載されていました。当時、アンティーク時計好きは、「トリコン、最高だよね」と、みんなが憧れものでした。その頃は、まだロレックス『デイトナ』よりも評価が高かったんです。でも、いつの間にか『デイトナ』の評価がすごく上がって、後を追うような形になりましたけど。

 当時のトリコンは、複雑な時計なので、修理して、調整してを繰り返しながら使う時計、というイメージがありました。いずれにしても、クロノグラフにムーンフェイズが加わった複雑機能を、36㎜のケースにギュッと収めているわけですから、すごい時計なんです。見た目的にも、機能的にも魅力のある時計なんです。

 この時計は60年代にエリック・クラプトンが使用していたことでも有名で、白文字盤に黒のインダイヤルを「Clapton」、この黒文字盤に白いインダイヤルの時計のことを「Evil Clapton」と呼んでいます。黒文字盤は、悪いクラプトンですね。クラプトンは、手巻きの『デイトナ』をしていることでも有名ですが、このトリコンも持っていたようです。60年代後半、クリームの時代だと思いますが、白文字盤のトリコンをつけている写真が残っているんです。


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再び価格が上がってきた


 そんなトリコンも、また評価されるようになってきました。ファイアーキッズのモデルは278万円ですけど、海外だと400万円を付けるところもあるようです。なので、いま世界でも200万円台で販売しているのは、稀有だと思います。

 僕はいま、海外に流出しないか、ということがとても気がかりなんです。外国人だと税金も還付を受けられますし。できれば日本人に購入していただきたい、と願っています。

 個人的にも欲しい時計ではあるのですが、いまは、ただ「眺めていたい」と思っています。なので、お店の一番いいところ、見やすいところに置いています。それで、お客さまに「見たい!」と言ってもらいたいと思ってます。そうすると、こちらも手に取ることができるし、この時計の良さをお話しすることもできますから。

 このトリコンはコンディションもいいですし、黒文字盤はとても見やすいです。タキメーターも黒で、締まった感じがします。それから12時位置にあるムーンフェイズの地色がブルーなんです。そういうところも、こだわっていていいのです。

 そして、そのムーンに顔がないのも特徴です。現行モデルの多くや50年代のモデルのムーンにはちゃんと顔が描かれています。描かれていないのが60年代らしさ、とも言えるでしょう。


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『トリコンパックス Evil Clapton』は素晴らしい時計なので、是非ともみなさんに見ていただきたいのですが、購入いただくとなるとちょっと寂しい感じがします。僕は店長なので、そんなことは言ってられないのですが、とにかくずっとお店にあって、眺めていたい、と思える時計なのです。

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