【今月の1本】鈴木雄士(顧問)湯たんぽが高度計?な、マニアックで面白いアルピニスト必須の時計、レビュートーメン『エアスピード・アルティメーター』

【今月の1本】鈴木雄士(顧問)湯たんぽが高度計?な、マニアックで面白いアルピニスト必須の時計、レビュートーメン『エアスピード・アルティメーター』

お店に入ってきたら是非購入したい

 今回は、自分が所有する面白い時計を紹介します。先日、お店にいらしたお客さまにその時計の話をしたら、面白いととても興味を示されて、お店に入ってきたら是非購入したい、と言ってくださっています。それで紹介させていただこうと思いました。

 それはレビュートーメンの『エアスピード・アルティメーター』というモデルです。アルピニストにはよく知られた時計だと思います。



 レビュートーメンは1853年創業の老舗で、時計だけでなく航空計器のトップメーカーでもありました。とくに高度計付きの時計は、コンパクトな登山装備用のモデルを製作しており、世界中のアルピニストから信頼されているようです。一般的にはあまり馴染みがありませんが、『クリケット』というコオロギの鳴き声とも称されるアラーム付きのモデルは、わりと知られているかもしれません。

 自分の『エアスピード・アルティメーター』は、1990年代のもので、ETAの手巻きムーブメントが搭載されています。面白い、の根拠は、そこに高度計が内蔵されていて、蓋を開けてみると湯たんぽみたいなケースが入っているからなのです。こちらは楕円ではなくて丸いのですが、まさに湯たんぽといった造形で、そこに棒が乗っかったものがムーブメントに付属しているのです。


“湯たんぽ”がミソ


 何人かに見せたのですが、時計に詳しい人ほど「なに、これ???」となるのです。それほど他のムーブメントでは見たことがない不思議な機械です。この“湯たんぽ”がミソで、これが気圧が高くなると膨らむことで、高度表示に繋がるのです。



 以前、富山県にある立山の「ホテル立山」に宿泊した時、売店をのぞいてみたら、ポテトチップスが全部パンパンに膨れ上がっていました。破裂しているものあったくらいです。それと同じ現象がケース内で起こり、“湯たんぽ”とオレンジの高度針が連動して文字盤上でその位置の気圧を知らせてくれるのです。

 使い方は、まず、手巻きなのでゼンマイを巻き上げます。それから高度を補正します。まずリューズを押し込むと時計内が外気圧で満たされ、オレンジ針が動くことで現在の気圧を示します。針の指すところが現在の標高となります。それに合わせて高度目盛りが刻まれた回転ベゼルを調整すると準備OKです。

 機嫌が変わりやすい人を、“山の天気”と表現することもあるように、山の天気はとても変わりやすく、登山中は定期的に高度補正をする必要があります。なので、操作が簡単で、さらに視認性がいい時計が好まれます。その点においても、1本の針で気圧が読み取れる『エアスピード・アルティメーター』は、最上級。アルピニストに好まれるはずです。

 価格的にも、90年代に10万円台で販売していましたし、大きさもロレックスの『オイスター パーペチュアル』くらいで、程よい感じです。ステンレススティール製とチタン製があり、自分のはチタン製です。マニアックですけど面白いので、今後注目したいヴィンテージウォッチです。

 








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