時計好きに「あなたの時計、見せてください」。今回、時計を見せてもらったのは株式会社テイラーアップの創業メンバーの一人にしてCOOを務める和田英男さん。愛用のロレックス『GMTマスターⅠ』とオメガ 『スピードマスター ブロードアロー』を見せてもらい、和田さんが先輩から教わった、いい時計との付き合い方を語ってもらいました。
いい時計は右手にする
和田 英男さんは、友人、松村 夏海さんとともに2020年、企業のライブコマースを支援する会社、株式会社テイラーアップを創業した。そして初年度に1億円の売上を達成。それで手に入れたのが1968年製のロレックス『GMTマスターⅠ』だった。
「いつかはいい時計が欲しいと思っていたんですが、焼け感とか、世界に一本しかない感じが好きで新作にはいかなかったんです。ツルツル、ピカピカの一年生、みたいな感じが僕は好きじゃなくて……」
ロレックス『GMTマスターⅠ』(1968年製)
1年間頑張った苦労を忘れないように、という気持ちもあってローンで買ったから、支払いの度に初心を思い出しますよ、と冗談気味に付け足す。いわゆる「ペプシカラー」で知られるモデルで、GMTマスターⅠにしたのは、そのカラーリングにずっと憧れがあったから。というのと、この価格帯だと多くの人が『サブマリーナー』を選びがち。かぶりにくい、というのも理由だった。
「僕は、アメトラとかアイビーと呼ばれるようなスタイルが好きで、いいヴィンテージ感が出ているリーバイスやオールデンには今も目を惹かれます。そういう感覚の時計が、今、自分の右手にある感じですね」
右手?
「そうなんです。これは以前、『POPEYE』の編集者 後藤健夫さんから教わったんです。いい時計は右手につけるんだよって。利き手に時計をしていると、ちょっとした動作で時計が見える。お酒を飲む時とか、仕草が変わる、というんです。たしかスティーブ・マックイーンも『モナコ』を右手にしているので有名ですよね? あと防水性のない時計でも傘を持つ方の手にしているほうが守れる、とも言われました」
働く男のギア
実は和田さんは、20代のころは幻冬舎やファッション雑誌『Free&Easy』など出版業界にて営業担当として活躍していた。その後、デジタルがわからないと先はない、とIT業界に飛び込んでいったところから現在につながるのだけれど、モノ選びのスタイルは、出版業界にいたころの影響が大きい。
「Free&Easyの編集長、小野里 稔さん(https://www.instagram.com/hailmarytrading/)からは色々と影響を受けています。いい時計を買っておけと言われたのも小野里さんからで、出版業界のお給料なんて安いのに、ちょっと無理して20代にオメガ『スピードマスター ブロードアロー』の文字盤がリダンされたものを買ったんですよ。20万円くらいでした。手巻きで、毎日巻いて、身につけるとカチカチと音がする。それがいいんですよね。その時に、頑張っていい時計をつけると、気分があがる、高揚感につつまれることを知ったんです」
男は武装しろ、という小野里さんの言葉も理解できた。
「誰だって臆病なんです。その臆病な自分に負けないように、武装する。いい時計、いい靴を身に着けて、自分を鼓舞する」
それはカッコつける、ということなのかもしれない。
「だから、仕事で大事な時には、いまはGMTマスターⅠをつけていくんです。単に時間を知るだけの道具、という意味でなら、僕もアップルウォッチもしますし、Gショックとかチープカシオなんかも好きでいくつか持っていますが、自分が生まれる前から時間を刻んでいるもの、歴史があって、物語があるものを身につけることで、引き締まる。感覚としては働く男のギア。仕事の相棒ですね」
ブロードアローは、いまではもっぱらオフ用になっているとはいえ、現役。GMTマスターⅠは、まだ、和田さんの右腕に来て1年とちょっと。これから、和田さんの人生の重要な場面を一緒に過ごすことで、より、相棒としての存在感を増し、他人からも和田さんといえばペプシカラーのGMTマスター、と認識されるようになっていくだろう。