ユニークな愛称もある、スタイリッシュなパイロットウォッチ「GMTマスター」

ユニークな愛称もある、スタイリッシュなパイロットウォッチ「GMTマスター」

GMT機能がメインのパイロットウォッチ


 ロレックスの数あるラインナップの中で、唯一のパイロットウォッチが「GMTマスター」である。ネーミングからわかるように、機能的に第二時間帯を表示するGMTがメインのモデルである。なので、他のパイロットウォッチとは少し毛色が違う。それは、多くのパイロットウォッチのはじまりが軍用であるのに対し、この「GMTマスター」は民間旅客機のパイロット用に開発されたものだからだ。



「GMTマスター」は、ジェット旅客機の黎明期である1955年に、パン・アメリカン航空の要望を受けて製作された。この時代は、旅客機による海外旅行が盛んになりはじめており、複数のタイムゾーンをまたぐことが多くなっていた。


 そこでパン・アメリカン航空がロレックスに求めたのは、出発地と目的地、2つの時間を一度に確認できる腕時計、ということだった。「GMTマスター」は、24時間で一周するGMT針に両方向回転ベゼルを備えており、一目で2つの時間を把握できるものだった。この仕様に大満足したパン・アメリカン航空は、「GMTマスター」を同社の公式時計に採用している。それもあって、このモデルは世界中のパイロットから支持を集め、人気モデルとなっていった。


2つのシリーズが存在する「GMTマスター」


 この「GMTマスター」には2つのシリーズが存在する。1955~99年頃まで販売された「GMTマスターⅠ」と、82年から現在まで続く「GMTマスターⅡ」である。


 まず「GMTマスターⅠ」の1stモデルだが、これは昼夜を一目で識別するためにベゼルを赤と青に色分けしており、とてもカラフルで個性的だった。このカラーリングは、ペプシコーラのロゴをイメージさせることから、愛好家の間では「ペプシ」と呼ばれている。




 これはシリーズの特徴にもなっており、他にも愛称がついたモデルがいくつか存在する。たとえば、ベゼルが赤と黒のモデルはコカ・コーラをイメージさせることから「コーク」。また茶色と金色のツートーンモデルは「ルートピア」と呼ばれる。これはビールのような炭酸飲料水で、こちらも缶の色合いが似てることから付けられたようだ。


 1stモデルに話を戻すと、赤青ベゼルにミラーダイヤルを組み合わせ、後のモデルにはついているリューズガードがないのが大きな特徴である。ベゼルは、当初、合成樹脂のベークライト仕様だったため耐久性に問題があったが、2年後にアルミに仕様変更されている。



 59年に発売された2ndモデルになると、リューズガードが備えられており、GMT針先端の三角形は現行モデル同様に大型化されている。そして、ケース経も38㎜から40㎜にサイズアップしている。この時点で、現在まで続く「GMTマスター」シリーズの原型が出来上がったといってもいいだろう。


 2ndモデルは80年まで続くロングセラーとなっており、年式よって仕様が違うのが特徴でもある。ムーブメントは初期が5振動/秒のCal.1566、65年以降は5.5振動/秒のCal.1575とわずかに機能アップしている。






機能的飛躍が見られる3rdモデル


 3rdモデルになってもデザイン的にほぼ変わらないが、機能的には大幅な飛躍が見られる。ムーブメントを日付の早送り機能がついた新型Cal.3075に変更。8振動/秒の高振動になっている。また、防水性能が50mから100mに引き上げられている。


 このモデルにはマットとグロッシーの2つの文字盤が存在する。ただし、ロレックスにオーバーホールに出すと、マットであってもグロッシー文字盤に換装されるので、マット文字盤のモデルは稀少である。



「GMTマスターⅠ」もこの世代になると、同時期に「GMTマスターⅡ」が発売される。この2つのシリーズはデザイン的に大きな違いはない。とくに後期の「GMTマスターⅠ」と「GMTマスターⅡ」を見分けるのは難しいだろう。


 2つのシリーズの違いは、「GMTマスターⅡ」が時針の独立調整機能を持ったモデルということ。つまり、「GMTマスターⅡ」は時針を単独で動かすことができ、「GMTマスターⅠ」は時針と分針が連動して動くため、それができない。「GMTマスターⅡ」は、この機能によってローカルタイムを単独で1時間ごとに設定することができる。さらにGMT針と分針が独立して調整できることで、24時間回転ベゼルと組み合わせて3つの時間帯の表示を可能にしたのである。



「GMTマスターⅠ」以上の機能を持った「GMTマスターⅡ」は、82年に赤と黒のベゼルを持った「コーク」カラーで登場。ムーブメントは8振動/秒の自動巻きCal.3085を搭載。このモデルは「自動巻きを搭載してケースが厚いためか、「コーク」以外にも「ファットレディ」という愛称で呼ばれている。



「GMTマスターⅠ」は99年に生産中止になり、新しいモデルは存在しないので、求めるならヴィンテージ市場のみとなっている。また、引き継いだ「GMTマスターⅡ」も人気が再燃しており、ヴィンテージモデルも注目されている。そして、その人気は、鮮やかなツートーンカラーベゼルのモデルに集中しているという。


 

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