出演
野村店長×藤井克彦(販売スタッフ)
ファイアーキッズYouTube第8回は国産の最高峰『グランドセイコー』。ブランド力が向上し、品質的に、そしてデザイン的にも優れたモデルは、円安の影響もあって海外流出の危機。日本にとどめたいので、是非、日本人に購入して欲しい1本である。
国産最高峰の時計
今回はセイコー。とくに『グランドセイコー』のファーストモデルを取り上げる。野村店長も「好きな時計」とハッキリいうほどのモデル。でも一番ではないようだ。
「どちらかというと『キングセイコー』の方が好きなんだけどね。どちらかというとだけど。でも、やはりこの時計は1本抑えたいよね」
では『グランドセイコー』ファーストはどういうモデルなのだろうか。
「やはり国産では最高峰と言って良い時計のひとつですよね。いまでも『グランドセイコー』という名前が残ることは、やはりこれのおかげだもんね」
確かに、現在はセイコーから独立し、グランドセイコーブランドとなっている。
「レクサクみたいな感じです。やはりスペシャルですよね」
そもそもこの時計は、セイコーの最高機という位置付けで出てきた時計だ。
「この時計のスゴさというか、日本の時計産業が。。1960年に発売なんですけど、スイスに負けないぞ、という意気込みが感じられる時計ですよね。文字盤にクロノメーターと入っていますけど、実はクロノメーター検定は受けてないと。ただ、グランドセイコーの基準はクロノメーターよりも厳しいよと。スイスに負けない時計ですよ。スペシャルな時計ですね」
すると、藤井さんも「日本の意地が感じられる時計ですね」と応じる。
「本当にそういう時計ですよね。やはり『グランドセイコー』ファーストもいろいろとあって、文字盤の種類とかで100万円オーバーとかもあるんですけど、これは1963年製なので、ファーストの後期の方。これは正直、狙い目。50万円アンダーで、機械は一緒で、文字盤のつくりも良くなってるからね、簡単にいうと。最初期なんて、ただのプリントだからね」
文字盤のつくりは後期の方がいい
たしかに初期はGRAND SEIKOの文字がプリントであった。
「いま、最初期の値段を聞くことが怖いくらいになっているからね」
そう聞いて、藤井さんも恐る恐る値を聞く。
「200万円といえば200万円だし、250万円といえば250万円だし」
そこまで差が出るものなのか?
「やはり、みんな最初期型は惹かれますよね。でも、ファーストモデルの後期だったら何分の1かの値段で、むしろ、文字盤のつくりは後期の方が良いからね」
後期の方は「いわゆる浮き出し」。
「こっちの方が凝ってるよね」
もちろん、ロゴなどの文字盤の文字は、浮き出し系の方がプリントよりも高級である。
「掘りは掘りで、また良さがあるんですけど、このスタイルだったら比較的割安な上に、当然、後期というくらいだから製品も安定してるし。僕は最初期というとちょっと疑ってしまう方で、トラブルとかそういうものが起こりやすかったりとか、そういうイメージがあるので、結構セカンド好きなんですけど。実用度は確実に上がっていくはずなのでね。基本的には改善していく方じゃない?モノのつくりって。そう考えると、後期型の方が実用だったら良かったりするんだよね」
すると「グランドセイコーもセカンドの方が実は好き、だとおっしゃってましたもんね?」と藤井さん。
「『キングセイコー』はセカンドが好き。でも基本的に『グランドセイコー』のセカンドもカッコいいけどね。ノンデイトも好きなので、そうなると、やはりファーストなのかな」
金張り、ノンデイト、手巻き
話は変わるが、この金のケースは金無垢なのだろうか?
「金張りですよ」
では、金無垢のモデルはないのだろうか。
「オーダー品みたいなもので(あります)」
ということは『グランドセイコー』のファーストモデルは、基本、金張りということだ。
「金張り、ノンデイト、手巻き、というところですかね。ただ、金無垢とか、プラチナ無垢とか、ステンレスとかが出てきてしまうんだよね。それもとんでもない値段で。また腰抜けるよ」
すると藤井さんが「金無垢、プラチナ無垢はわかるんですが、ステンレスもあるんですね」という返答が。
「これはグランドセイコーのサービスの人に聞いたんですけど、一応、製品のカタログとかにはないけど、製造した記録は残っていると言ってました。これは20年くらい前の話なので、変わっているかもしれませんけど。過去にこれは間違いないだろうな、というステンレスのケースもあって、グランドセイコーサービスに持っていって修理してくれたんです。そして、明細も出て、一応、製品として売った記録みたいなものはないんだけど、製造した記録はあると言ってましたね。試作品の可能性もあるし、何とも言えないんですけど」
ということは、存在はしているようだ。ただ価格については難しいとのこと。
「ちゃんと値段がついているのを見た記憶がないな。だから、15~20年くらい前の話で、この辺が20万円台とかの時に、100万円近く。5倍弱くらいかな。なので、いま出てくるとその倍率も上がってくるのかな、という」
となると300~400万円の世界である。
ファースト後期が狙い目
「コレクターさんが握ったら離ないってことなんでしょうね。それはそれで本当に珍しいものは、コレクターさんが持っていればいいと思うんですけど、実用で考えたら、もうファースト後期、狙い目です」
サイズ的には35~36㎜。
「いいサイズ感ですよね。もう本当に実用。継も比較的抑えられていて、腕にフィットする。『グランドセイコー』が好きな人もいろんなタイプがいて、やはり『44』とか『61』とか、パッと見てセイコーという時計が好きな人もいれば、やっぱりファーストのね、インター(IWC)とか、そういう(モデル)の影響があるのかな、というこのデザイン(が好きな人もいる)。やはりスイスの高級時計を超えると言いながらも、意識してしまっている。でもやっぱり(これが)1番時計らしいスタイルですね。時計を絵に描いたらこの感じ」
確かに子供に腕時計を描いてというと、この(ファーストのような)デザインの時計になるだろう。
「こういうシンプルなものほどつくりの良さが出る。ごまかせないね」
よく見ると針もよくできている。ちょっと斜めにカットされている感じも。
「仕上げが入ってる。結構、国産の1940~50年代の時計とかも、職人の手作業が入ってるなという良いものがいっぱいあるんだけど、残念ながら素材がよくない。そういう部分があって、その年代の時計を分解掃除すると動くんだけど、1年以内に止まってしまうとか」
その原因は?
「目に見える範囲ではなく、歪みが出たりとか、そういうのがあって、すごく良いものはつくっていたんだけど、やはり元の素材の質が低かった。50年代後半くらいから、日本の製鉄の技術も上がってきて、スイスに負けないクォリティのものが出てくる。本当に代表作だよね。変な話、当時の日本の人件費というのは、めちゃくちゃ安かったので、職人の手作業とかいうのものは、たっぷり時間をかけてやってもいいものだったんですね。それが『グランドセイコー』になると、特につくりが良いなという。スイスに宣戦布告だよね。永世中立国相手にね(笑)意気込みを感じるよね」
クレームが入るほどのクォリティ
しかし、時計後進国と思っていた日本がこんな時計をつくってきた。それは時計王国であるスイスの人たちもびっくりしたことだろう。
「そういうクォリティの時計で、気になるからこそ、(それは)クロノメーターではないだろう、というクレームが入る訳ですよ。もう、鼻にもかけないというクォリティだったら、そんなクレームは入らないでしょうね」
確かに、スイスのクロノメーター協会が気にしはじめたのだから、スゴいことでもある。
「それだけのクォリティのものが出せるようになったという部分で、日本人として嬉しい時計ですよね」
現在『グランドセイコー』は外国人にもファンが多いようだ。
「いま値段が高くなっている要因は、それも大きいかなと思います。この間、マレーシアの人と話していて、“オメガとセイコーだったらどっちが良い?”と聞いたたら、“セイコーの方が良い”と。“国ではみんなそうなの?”って聞いたら、“たぶん、みんなセイコーのものが良いと言うよ”と。『グランドセイコー』といったらちょっと別格だよ、と。海外ではレクサスみたいな扱いなんでしょうね。そういう認知度が高くなって、海外に良いものが流れていく。円が安いからね」
海外での評価も高い
それについては藤井さんも「この間もふらっと外国の方が(店に)来てくださいましたけども、その方のお兄さんも(セイコーの)白樺モデルを持っていて、自分もグランドセイコーに興味が出てきたので、いま、こういうファーストとかを見てるんだ、と言ってました」というエピソードを話してくれた。
「やっぱり、それだけ海外で評価されているということなんでしょうね。日本人として嬉しく思います。それの初代だからね。海外流出を防ぐためにも買ってください」
その外国人も日本のものは状態がいいと言っていたそうだ。
「とくに日本人は、モノの扱いが丁寧ですよね。環境がね。四季があるから、決して良くはないんだけど、という部分はあるのかな。とくにファーストモデルは、メダリオンが欠落していたりとか結構あるんで。ライオンくんがいない、というものが結構あるんですけどね。この子はちゃんといますよ。キレイに残ってます。やはり日本は梅雨があるので、湿気にやられてしまうのはしようがないのかな、という気はするんですけど」
先ほど藤井さんが話した外国の方も、自国にある『グランドセイコー』は状態の悪いのが多いとのこと。ファイアーキッズには『グランドセイコー』ファーストが3本ほどあるが、それを見た彼は「自分の国では信じられない」と、その状態の良さに驚いていたそうだ。
「というか、もう当時は国内向けに売っているから、あまり輸出してないのよ、実際のところは。ただ生産数は3万本くらいだったかな。結構少ないんですよ、ファーストは。なので、日本の方、是非!良い時計なので。買ってください、よろしくお願いします」