【新旧店長対談1】後編 ケース素材の硬さ、パッキンの質、と使用する素材の違いもアンティークウォッチの魅力のひとつ   野村一成(店長)× 鈴木雄士(顧問)

【新旧店長対談1】後編 ケース素材の硬さ、パッキンの質、と使用する素材の違いもアンティークウォッチの魅力のひとつ  野村一成(店長)× 鈴木雄士(顧問)


マイスター2人の60年代の話は、国産、欧州から、価格、そして素材の核心へと続いていきます。


同じ年代でもメーカーによって違う


野村:1950年代のケースはやや硬めですね。60年代になると若干柔らかくなり、70年代もちょっと柔らかいという感じです。60年、70年代のロレックスは腐食とかしづらいですね。

鈴木:同じ年代でもメーカーによって、ステンレスの硬さとか、粘りとか違いますからね。大量生産へと移行するなかで、つくりやすい方向に振っている部分があるのかもしれないです。


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野村:素材が柔らかいと傷はつきやすいですけど、磨きやすいです。衝撃吸収は、やはり柔らかい方がいいのかなと思います。

鈴木:ロレックスは、3回以上は磨けるように肉厚につくってあります。傷がついても磨けるように。4回、5回となると、痩せすぎちゃうので磨かない方がいいですけど。

野村:細かい傷だったら、何度磨いても大丈夫なんですけど。使い方ですね。

鈴木:深い傷がついて、どんどん磨いていっちゃうと限界があるということです。ホント、痩せているケースってありますからね。ラグの横穴が面一くらいになってたり。なるべく綺麗な形で売りたいという気持ちもあるので、磨くお店は多いですけど。ただ、今は傷があってもエッジが残っているとか、オリジナリティが高い方がより良いとされていますので、その辺りも考え方が変わってきていますね。

野村:考え方次第ですよね。メーカーに出せば、自動的にポリッシュまでかけるので。

鈴木:その辺は、モデルによりますね。『デイトジャスト』のコンビとか『デイトナ』のコンビとかは、磨いた後、とても綺麗です。逆に『エクスプローラーⅠ』じゃないですけど、ちょっと傷があった方が格好いいみたいなモデルもあります。


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野村:アンティークが好きな人は、汚くてもオリジナルがいい、っていう人もいますし。

鈴木:デットストックを使うっていう人もいますからね。デットストックだから取っておこう、ではなくて、デットストックをあえて買って使うという人もいますし。


メーカーによってパッキンが違う


野村:それから、防水性に関連するのですが、メーカーによってパッキンの質が違いますよね。

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鈴木:古いロレックスなどをメンテナンスで預かって、裏蓋を開けると、パッキンを含めて何も替えてないことが多いですね。それでパッキンを剥がそうとすると、固着しているか、剥がせたとしても板チョコみたいにパキパキになっているという。とくに取りづらいのが、チューブの中。針やドライバーの先を尖らせて、穿り出す感じですね。そうすると割れる音がするんです。ちょっとずつ割れて取れていくんです。なかなか大変なのです、その作業は。それはロレックス特有ですね。なんか硬くなっているんですよ。それだけ交換していないし、昔の職人さんはケース洗浄とかしないし、パッキンを替えない人が多いんですよ。日本の町の時計屋さんは、機械洗浄と注油だけする人が意外に多くて。オメガの場合は開けた時にタール状になっているんです。

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野村:ドロドロになっていますね。

鈴木:これはまた、大変なんです。爪楊枝で穿り出して、ベンジンで拭いて、シンナーつけてとか。

野村:なんでしょうね、あの差は。

鈴木:自分、思うんですけど、ゴムに含まれている硫黄分というか、空中の窒素酸化物なんかが化合するんじゃないかな、と。それで溶けてしまうという。

野村:ロレックスのパッキンが溶けていることはほぼないじゃないですか。

鈴木:それは日本の環境だからではなくて、オメガが使っているパッキンがちょっと硫黄成分というか、そういうのが違うんじゃないですかね。10本あったら、10本ともそうなっているわけではないので、どこで仕入れたかは関係ないと思いますし。


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パッキンにグレードがあった?


野村:40年代、50年代はないんですよ。その時代は、ほぼ鉛ですから。だから60年代のオメガに多いような気がしますね。

鈴木:なんか『コンステレーション』とかは平気で、『シーマスター』や『ジュネーブ』に多いような気がします。パッキンにグレードがあったのかは、わからないですけど。

野村:『シーマスター』は多いですよね。

鈴木:スクリューバックのものに多いような感じもします。

野村:ロレックスもオメガも、壊れるまで動かし続けていました、というものに多いですね。

鈴木:それは町の時計屋さんが、注油はしますけど、ケース洗浄はしないしパッキンを交換しないからというのも一因だと思います。正規に出せば100%パッキンは替えますし、ファイアーキッズも確実に替えます。アンティークウォッチと長く付き合うためには、メンテナンスが大切になってきますから。

野村:そういう意味でも、アンティークウォッチは思い入れのある人が買って、使ってくれるのが一番いいと思うんです。先日、80年代のモデルを買った人は、自分の生まれ年のものだって言ってi

ましたけど、そういう人には使って欲しいですよね。いいな、って思います。

鈴木:これも実際にあった話なのですが、お爺さんから亡くなる間際にもらったロレックス『エアキング』の製造何年製を調べて欲しい、というお客様がいらっしゃったんです。調べると、お客様の生まれ年のものだったんです。お爺さんが買って、用意しておいたみたいです。小学生、中学生の時に渡しても価値がわからないじゃないですか。その方は30代半ばくらいでした。素晴らしい話ですよね。


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機械式時計の良さを知ってもらいたい


野村:そうかと思えば、今日いらしたお爺さんは、息子にあげるって言っても、いらないって言われた、と。そういう人もいるんですよ。

鈴木:時計のような趣味のものって、その人の嗜好が大きいですよね。

野村:そうですね。良さをわかっていただいていると、嬉しいんでしょうけど。

鈴木:若い人たちに機械式時計の良さを知ってもらって、ユーザーが増えて欲しいのがひとつ。もうひとつは、40、50代になって生活にゆとりが出てきた人に、昔好きだったロレックスやオメガを、今買えるんだったら是非買ってくださいと言いたいです。アンティークウォッチデビューとしては遅いと思われるかもしれませんが、我々が早すぎただけなので。今は価格も上がっており、若い人には難しいかもいしれませんが。

野村:先日、10年前に自分が書いたブログを見たんです。20歳の人が、生まれ年の時計を購入してくれた話が書いてありました。時計はロレックスだったんですけど。ちょうど30年前になりますから、92年製の時計を買ってくれたんですが、ブログの最後に「10年後、あの時買ってよかったな、と思えてもらえれば嬉しい」みたいなことが書いてあったたんです。今絶対に値段が上がっているから、あの時買ってよかったと思ってくれているだろうな、と(笑)

鈴木:そういったことが入口になって、アンティークウォッチって面白いよね、と思っていただければ嬉しいですね。

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